安藤 耕司

東京女子大学 現代教養学部 数理科学科 情報理学専攻


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理系科目の学習について

大学に入ってからの学習が、高校までと異なっていることに戸惑いを感じている人も多いことと思います。
高校までは、学習指導要領によってパッケージ化された内容を一律に学ぶことが主眼となってるのに対し、 大学以降はそうではありません。
英語では、前者をclosed ended、後者をopen endedと呼びます。
後者は、既知のものに閉じているのではなく、未知の領域にまで開かれているからであり、 大学における「学問」とは、本来そういうものです。

実際、世の中に出て皆さんが解決して行かなければならない問題や課題には、 それらが重要であるほど、 与えられたマニュアルや規定の処方箋が存在しないことの方が多いはずです。
よって、大学で学ぶ人たちに求められるのは、 単に既存の知識を与えられ身に付けることではなく、 自己を分析し、自律しながら学んでいく姿勢と方法を確立することです。

大学での勉強に躓く理由にはいくつか典型的なものがあります。
(単なる怠惰によるものは除外します。 ただし、躓きと怠惰が連動/循環していて、軽い躓きを取り除けば怠惰も治るということはよくあります。)
とくに理系の場合には、積み上げの要素が大きいので、その積み上げが不十分であるという単純な理由が多く見られます。

突然目の前に高さ2メートルの壁を置かれ、これによじ登りなさいと言われたらきついでしょう。
しかし、1段が30センチメートル程度の梯子を掛けたら、一歩ずつ登って行ける見込みや意欲も出ます。
高校までの学習は、学校や塾から丁寧に作られた梯子を用意して貰えていたようなものです。
大学以降になると、梯子が無かったり、あっても段の間隔が1メートル近くあったり、所どころ段が抜けている(ように見えたりする)。
そのときに、自分に合った梯子なり台を自分で探して来る必要があります。
それにより、上記のように 自己を分析し、自律しながら学んでいく姿勢と方法を確立することが可能となります。

壁を前にして、思考も行動も停止してしまってはダメです。
自分の手を動かして計算を追ってみる、要点をノートに整理してみる、参考書などを探してみる、友達に聞いてみるなど、 何らかの行動を起こし、立ち位置と視野を変えることで、適切な梯子や台が見つかる、あるいは自作できるようになります。
(もちろん、教員に質問するのは良いことです。 また、授業担当とは異なる先生に聞くと、新たな視点が得られて良いという場合もあるかも知れません)

自然科学は、適切な手順と段階を踏めば、誰にでも必ず理解できます。
科学とはそういうものであり、そうでないものはそもそも「科学」ではないからです。


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